2018年12月5日水曜日
第2章 子犬の選択
さてあなたは既に指示犬種の中で、自分の希望する犬種を選んだと仮定しよう。次に為すべき事はその犬種の中から一つの仔犬を選ぶ事です。既に申上げた通り、今日では殆どの犬種が品評会の為に作られた所謂ショードッグと、狩猟そのもののために作られたフィールド系との二つの系統がある。あなたが選ぶ仔犬はFDSBに確実に登録されたフィールド系の血統でなければならない事を注意して欲しい。
フィールド系の血統にも、その犬種の本流から由来するいくつかの亜流がある。或る作出家はこの系統を出来る限り純粋に保とうと努力し一貫して一つのタイプを再現するような系統の発展に成功している。此等の作出家は、いくつかの立派な犬を作出している。若しあなたが、これらの純粋な系統から、確かな仔犬を入手する事が出来たならば、あなたの成功するチャンスは非常に増えた事になる。これを除いた第二の方法は、既に良い犬を産出した事のある、良く知られた交配により出来た仔犬を入手する事です。次には父犬と母犬について、それらの外観や天賦の能力について注意深いテストの後、その配合によって出来た仔犬から選択する方法です。
ガンドックの外観については、後に体構の章で詳しくのべます。
ガンドックの天賦の素質とは、その走り具合、足どり、猟欲、性質そして嗅覚能です。あなたの仔犬の外観で注意しなければならない事は遺伝的な体の異常であり、意地の悪い、或は憶病な性質、精神の安定性の欠如、魅力の無い外観、そして嗅覚と猟欲の欠如等です。最も一般的な身体の異常は股関節の発育不全であり、又、大腿骨頭と寛骨臼の貧弱な結合であり、普通亜脱臼として知られた状態で、即ち球状関節として更に一般に知られているものです。
この状態はかなりの率で波及しているので、多くの作出家にとって重大な関心事となっている。大体35以上の犬種が、この推測上劣性の遺伝因子を持っていると考えられて居る。これは主に大きな犬種に現れ易く、猟犬種の中でも或るものはこれに侵されているが、大体ベンチショーの系統に限られている。この状態はX線無しには仔犬から発見するのは殆んど困難である。若しあなたが考えている仔犬の祖先に、股関節発育不全が出現した微兆があったなら、色々な意味で決してそれを求めてはいけない。若しあなたの心の中に何か疑いが持たれたならば、その仔犬のX線写真を撮影してください。そんな時は他の評判の良い作出家より求める事をお勧めします。
父犬や母犬を評価する場合、決して訓練の度合に多くを影響されてはいけない。そしてその犬達の自然の素質を良く判断しなくてはならない。訓練というものは人が作ったもので、その自然の能力のように遺伝され、後代に伝えられるものではない。大変良く訓練された犬というものは、単にその犬は訓練を加え得るという事を証明するだけであり、これは殆んどの犬について言える事です。若し或る犬が他の犬達よりも早い年令に、しかも易しく訓練し得ようとも、私は尚一方では訓練する事が出来なかった犬を見て来ているのです。犬の天賦の能力は、仔犬を選択する場合に如何なるものよりも最も必要な素質であり、根本的な要素です。事実上、すべての自然の素質を大変幼い犬の上に決定しようと言う事は難しい事です。そして若し仔犬が購入されようとする時に、人々は、それが持っているであろう自然の素質を判定する為に、何度も何度もその両親犬の所へ通わなくてはいけない。
しかし乍ら、あなたの将来ある仔犬を約3~4ケ月の頃入手するのは望ましい事です。この年齢においては、あなたは犬をより良く評価する事が出来、あなたが期待するマナーを教え込むのに十分な若さであり、そして犬の愛情を完全に獲得するのに適当な年齢です。この際、あなたが仔犬を入手する年齢について、更に詳細に論じてみよう。
この点については特にクラーレンス・ファッフェンバーガー(Pfaffenberer's)が「犬の動作の新知識」という本を出版してから、最近たくさんの事が言われている。この本は大変良く調べられているが、動作の研究についてロスコーのB・ジャクソン記念研究所のJ・パウル・スコット博士の指導のもとで、仕事についての大変含蓄の深い分析が為されている。そして同時に盲導犬についてのパッフェンベルガー氏自身の経験も含まれている。要するに彼は仔犬は生後7週目で訓練を始められなければならぬと奨めている。彼は動作研究所において、犬の智脳が完全に成熟して訓練や進歩を良く受け入れられるようになる年令を決定するのを、どのようにして発見したかを説明している。この発見はむしろ近代になってからのものであり、如何に正しく、これが猟犬に応用され得たかという事も今や実証されている。犬は若い方が訓練され易いという事は、良く認められている事実です。仔犬を7週間目で入手するという事で唯一の問題点は、その時期では未だあなたにとり良い選択をするには尚発育が不充分ではないか?という事だけです。年の進んだ仔犬を購入するのは先づは安全な事です。この場合はその仔犬と、犬舎の外で、ほんの一寸の時間を過ごすのみで簡単に決定出来きます。
あなたは程なく私が書こうと思っている、釣竿につるした鳥の翼に対する仔犬の反応がどうか、という事を見られるだろう。若し仔犬が憶病さや神経質さをすべての動作に示したならば用心した方が良い。有名な作出家は普通この点を見る事を良くわきまえているので、彼等が飼育している仔犬達は良く調べられている。この点に熟達する事は非常に複雑であり、我々の只今の直接の目的には余り重要な事ではないが、これに関連してあなたの選んだ仔犬に注意しなくてはならないのは音です。
訓練期間中において、あなたの仔犬が着実に進歩して行かないのみならず、代りに憶病さや神経質さが進んでゆくようであるならば、仔犬を取り替えた方が良い。これは冷淡に聞えるかも知れないが、すべてにおいてその方が良い。貧弱な素質の犬は、楽しく、快い、心からの満足感等からは程遠い悪夢のような経験です。さて仔犬の選択に戻ろう。
仔犬が戸外で走れるようであれば、作出者に野外で犬を見せてもらいなさい。若し今迄に全く猟野で走った事が無かったら、ほんの2~3日のテストをお願いし、猟野に連れて行って見る事です。その仔犬を猟野で検討する場合、如何なる場合でも、その犬に完成されたシューテイングドックを見ようと期待してはいけない。そしてその仔犬の走り具合の概念を見取らなくてはいけない。彼は活動的な走り具合を持ち、頭を高く、尾はジャンプに対してピシッと打つように鋭く、且つ常に背線より高くなければならない。彼の歩態は素速く、幅広く、円滑で、優雅でなければならない。幾つかの犬は走る時に跳ねたり、揺れたりする傾向のあるものがある。又、一部には短い波立つような歩態のものもある。これらの犬は非活動的なばかりでなく、円滑な状態の犬より持久力が無い傾向がある。スピードが必要な理由は明白です。速い犬はより速く猟野をこなす事が出来、更に与えられた一定の時間内により多くのゲームを発見する事が出来る。他の点では、大胆さと自主性です。若し彼が人なつこく、又、変ったものに恐れず、更に正常な性質を持っていれば大変好都合です。この仔犬に銃声を聞かせるのは不当な事です。その犬が今迄にガンシャイにされていない限り、銃声に馴らすのは簡単な事です。犬を銃声に馴らす訓練については後程の章で充分にお話しします。
自分の主人以外には何等興味を持たず、何の目的もなく走る仔犬よりも、例えば小鳥とか蝶とかの生き物に興味を示す仔犬に目をつけてください。
殆どの仔犬は他の犬の跡をつけて走る傾向があり、殊に相手が年取った犬とか速い犬だと余計です。しかしこの一点に余りこだわる必要は無い。なぜなれば、一度彼がゲームを自分で発見した場合には、他犬の跡を追うより鳥を捜す方により多くの興味を示すからです。
しかし乍ら、彼が何回もの戸外運動や、ゲームとの出会いを重ねても尚他犬の追跡をするような場合は、その犬を購入する事はおすすめ出来ない。仔犬の走り回る広さは余り重要ではない。何故ならば、それは彼の訓練中に調整出来るからです。若しあなたが仔犬のゲームに対する態度をより良く見ようと思うなら、仔犬に視覚でのポイントをさせる易しい方法は釣竿につるした鳥の翼を用いれば良い。これは鳥の翼を約2m位の軽い釣竿の先に2.5m位の細いヒモで一緒に結びつけた簡単なものです。
その翼をヒラヒラさせて、仔犬が見えるように地面の上に置きます。そして仔犬がそれを捕まえようとしたら素速く引っぱってしまい、これを仔犬がポイントする迄続けます。但し仔犬に捕まえさせないように注意する。このテストは仔犬を選択するのに手助けになるだろう。或る仔犬は素速く目でポイントし、又、或るものは仲々それをしない。これは或る程度仔犬達の遺伝的のポイント能を示すものと信ずる。ここで、立派なポイントスタイルと一般に考えられているものは何かと言う点を考えて見よう。
犬の頭部は高く支持され、尾は真直ぐに背線より持ち上げられていなくてはならない。彼の全身は固く不動であり、ゲームが翔つ迄そのままでいなくてはならない(スタンチネス)。彼の頭部は鳥臭を取っている方向に正しく向けられているべきです。足の位置は、彼が前や後に屈んだりしない限り余り重要な事ではない。以上の事柄のそれぞれの理由は明白です。即ちスタンチネスはゲームを飛び翔たせないようにし、高い姿勢は、濃い密林の中で彼を発見し易くさせ、鼻の方向は、それによって鳥の翔つ場所をあなたが知る事が出来る。仔犬を選ぶ場合の今一つの事柄は毛色です。セタには白黒、或は黄色の斑点の混じった白黒、そして白オレンジがある。ポインタでは優性の毛色は白リバーですが、白黒、又、白オレンジも承認されている。私はこれ以外の如何なる毛色も望ましくないと考えている。それは純粋の作出を反映していないかも知れないからです。仔犬の斑点については、濃い斑点がある犬は、淡い斑点の犬より密林の中で目立ち難い点があるにしても、一般的な外観を除いては余り問題にならない。ポインタやセタに現れる小さな色の斑点は何等の意味もない。或る系統のものでは他のものより多く、このような小斑が出るようですが、総体の外観と、個人的な好み以外には重要なものではない。仔犬を選ぶ前に御注意願いたいのは、体構と鳥猟犬の作出の章を読んで戴きたい事です。
あなたが仔犬を購入する場合、有名な世に認められた作出者から選ぶよう私はお奨めしたい。それには多くの理由がある。多分最も大切な事は、そのような作出者によって作出された仔犬は、その性能が、名の知れない作出者より入手した仔犬に比べて、身体的な観点からも、又、血統からも、遙かに素晴らしいという事です。
有名な作出者は常々、その仔犬の先祖に良く知られた演技犬のたくさんの親を持っており、これに反して一時的の作出者はただ単に母犬を持っているに過ぎず、更にその母犬の血統や背景も、或は場合によっては父親さえも知らない事がある。世の中には、ただ仔犬を売る為のみで素晴らしいガンドックの純粋な線を打ち立てる事に殆んど興味の無い作出者がいるものです。一方著名な作出者は彼等の仔犬に高い値を求めるかも知れないが、普通それだけの価値があるのです。永年に渉って系統を樹立し、向上させて来た莫大な投資が、彼等の仔犬達に高度の価格を要求するのです。このような作出家からの仔犬は、身体的にも非常に優れているのも事実です。何故ならば仔犬達は注意深く作出され、食餌を与えられ、疾病や内外の寄生虫から守られているからであり、これらのすべての事柄が仔犬達をより優れたものにする傾向があるからです。
一方、著名な作出者は、自分の売った犬を後々迄も面倒を見るけれども、これに反して一時的な作出者はこのような事はしない。
又、あなたが求める仔犬はクル病になっていないか注意して下さい。この恐ろしい病気は、仔犬を注意深くテストする事によって発見出来ます。症状は延びた関節、前後肢の屈曲、胸腔の両側の肋骨接合の肥大(佝僂病として知られている)、或は如何なる程度にせよ関節の軟弱と不具等です。さてここで犬に支払われる金額について一寸言わなければならない。この問題について私が明らかにする事が出来る唯一の事は、当初の出費は、後程その犬のそれからの生涯において支払われる出費のほんの僅かの部分にしか過ぎないと言う事です。「平凡な犬でも、食事、訓練、犬舎や注意等、価値ある犬に要すると同様の費用がかかる」と昔の人の言った事は真実です。狩猟家達が僅かの価格を惜しんだ為に、仔犬達の値段を値切り、遂には好ましくない仔犬を求め、最初の一年の内に何回も出したり入れたりして、犬舎や訓練、飼育や食事等に金を浪費するのを、私はしばしば見ている。又、如何なる大金でも労力でも無頓着に出すけれども、尚平凡な犬しか持てない人がたくさんいる。一方、若しその仔犬が良い血統を持ち、将来を期待出来るような素晴らしいものであったならば、狩猟の友としても、又、犬自体の価値という面からも、何時も主人にとって大切なものになるであろう。
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