HAMAKAZE jj: 第20章 フィールド・トライアル

2018年12月23日日曜日

第20章 フィールド・トライアル


 フィールド・トライアルとは基本的には一定の基準のもとに、競技によってシューティングドックの演技力を競う事を意味する。一方多くの猟人や猟犬の所有者は、フィールド・トライアルやトライアル犬は自分達の為のものでないと考えている様に思えるが、これはこのスポーツに対する理解が足りない結果であると私は信じている。

 シューティングドックを向上させ、訓練するスポーツにおいては一頭の犬の性能を他の犬のそれと比較する意味で、競技は有益なものです。ゴルファーはゲームを楽しむ為にゴルフをするが、殆んどのゴルファーはトーナメントとして競技するのを喜ぶ。射撃家もトラップ、スキート、ライフルと彼等の競技会を持って居る。同様の事が他のスポーツでも言え、又鳥猟犬そしてこのトライアルでも全く同様です。



 フィールド・トライアル犬は本質的にシューティングドックであり、彼の猟能が審査されるのも、この観点に立ってです。今日ではいろいろな種類のトライアルがあるが、それを簡単にお話しして見よう。

 その殆んどのものは与えられた場所で特定のゲームに当てて、シューティングドックの価値を競う事の直接な現われです。これはすべて英国において何十年も前に始められたものである(1866年)。アメリカのトライアルは1874年にテネシー州のメンフィスにおいて行なわれた。現地のハンターのグループや犬の作出家達が、明確に自分達の持物を競う事を望み、この様にしてフィールド・トライアルは生れた。その時以来、このスポーツは大変急激に発展した。今日では、アメリカのあらゆる場所で数百に及ぶトライアルが年間を通して行なわれている。そして現在の発展は昔に比べて大変なものです。

 このトライアルは、その地域やゲームに従って多くの一般的なタイプに分けられ、フェザント(きじ)トライアル、クエル(うずら)トライアル、グラウス(雷鳥)トライアル等と呼ばれている。カナダの北西や西部地方では、シャープティルグラウスやハンガリアンパートリッジ(やまうずら)等のトライアルがある。その各々のトライアルは、それぞれ多少異った演技犬を要求しているが、本質的なものは同様です。

 犬達はすべて同じマナーを表現し、彼等は何時も基本的に彼等の鳥を発見する能力を審査される。トライアルの部門やクラスは非常に良く組織化されている。それはそれぞれアマチュアかオープンの何れかに分離されている。

 アマチュアステイクにおけるハンドラーは、彼が犬のハンドルや訓練によって金銭を受け取っていないと言う点での、真のアマチュアでなくてはいけない。オープンステイクはアマチュアであれ、プロのトレーナーであれ、誰でも良い。アマチュアの地位はフィールド・トライアルにおいては、他のスポーツと多少異ったものがある。フィールド・トライアルにおいて、アマチュアはオープンステイクで戦い、彼の地位を傷つける事なく賞金を受取る事が出来る。アマチュアにおいては賞品はトロフィーであり、オープンステイクにおいては賞品は現金であり、それは通常出犬料の一部か懸賞金の何れかです。フィールド・トライアルにおいては、犬のプロハンドラーが賞金を獲得するのが通例であり、若しトロフィーがあったならば、それは犬の所有者に贈られる。その組織が競技場において或る競技部門に特殊な制限を付けない限り、如何なる指示犬種でも与えられたトライアルに出場して競う事が出来る。

 或るトライアルでは出場犬を特殊な犬種に限定している。例えばジャーマンショートヘアー種、ブリタニースパニール、ワイマラーそしてアイリッシュセタ等の愛好家は犬種を限定してトライアルを行っている。しかしながらトライアルの大多数のものは一犬種に制限していない。

 これらのトライアルでは出場犬の大多数はポインタとセタです。普通行なわれているステイクはパピー、ダービー、オールエイジそしてシューティングドックとして知られている。これ等のステイクの各々はオープンかアマチュアです。パピーステイクでは若しトライアルが秋に行なわれるならば、前年の7月1日以降に生れた犬に制限される。パピーステイクが春に行なわれる場合は、前年の1月1日以降に生れた犬が含まれる。フィード・トライアル・シーズンは普通翌年の6月迄続けられる。従ってダービーステイクは前年の1月1日からそれ以降に生れた犬の為にある。従ってシーズンの始りにおいては、約1才半の犬がこの資格を持つが、シーズンが進み、何カ月か経ちダービーシーズンが完了する頃には2才となるだろう。

 競馬のサラブレッドレースと同様に、1月1日はフィールド・トライアル・ダービー犬にとって、全国的な誕生日です。オールエイジステイクとシューティングドックステイクは全年令の犬の為のものです。殆んどのトライアルにおいてはオールエイジステイクとシューティングドックステイクとの大きな違いは、レンジの要求差においてです。オールエイジステイクはなるべく広いグランドを捜索する犬の為であり、一方シューティングドックステイクにおいては、レンジはそのステイクが扱うゲームの自然の猟において要求されると同様程度のものです。

 フィールド・トライアルの機構は非常に簡単です。犬達は所有者とハンドラーかの何れかによって、組織の書記か或はそのトライアルを行うクラブに出場申込をする。これは普通トライアルが行なわれる前の晩に行なわれる。そして各ステイクの出場犬は出走順番を定めるために籤を引く。犬達は順番に並べられ、組にされる。第一番目と二番目の犬が第一組となり、以下同様に組を作る。各ステイクはそれぞれ別れて誘導される。各組はそれぞれのステイクの基準に従った30分から3時間の間走らせられる。

 ステイクは普通経験豊かな適切な2人によって審査される。そのステイクの含む総ての組の競技が走り終った後に、審査員は1位、2位、3位を選ぶ。若しこの所謂第一シリーズと呼ばれるレースに、犬が充分演技が出来なかったか、或は大変似かよった犬が多かった場合には、第二シリーズを行う事が出来る。これは彼等が今一度見たいと思う特別な犬を走らせる事であり、この場合は望むだけの時間走らせて良い。一組の犬が走るグランドをコースと呼ぶ。普通トライアルの一団を接待係がコースに沿って誘導する。フィールド・トライアル・パーティーは、組になった犬をハンドルする2名の競争者(ハンドラー)と2名の審査員、接待者、そして観衆から成っている。このパーティーは上の様な順序で、徒歩か或は馬に乗って犬の後に続く。便宜上殆んどのトライアルが馬に乗って行なわれる。

 トライアルは連続したコースか或はシングルコースで行なわれる。連続コースとは、その言葉が示す様に各組の犬がそれぞれ新しいコースか或は数時間内に使用されていないコースを次々に出走する場合です。これをする理由は、これらのトライアルは自然鳥に対して行い、たくさんのコースを用いる事によって、犬やトライアルパーティーによってかき廻された後に、鳥は自分の自然の住場所に帰る機会を与えられるからです。シングルコース・トライアルの場合には、総ての組は同様のコースを用いる。

 シングルコースの終りの場所には、犬達の為に置き鳥がしてある特殊のフィールドがある。これらの置き鳥は--普通鶉か雉が用いられるが--、バードフィールドと呼ばれる場所に、各組の出走の間に置かれる。これによってすべての競争犬にゲームをポイントする均等の機会を与える。シングルコース・トライアルは普通連続コースを用いる事が出来ない様な所か、或は自然鳥が不足している様な場合に行なわれる。

 アマチュアステイクを行っている殆んどのクラブは、アマチュア・フィールド・トライアル・クラブズ・オブ・アメリカ(A.F.T.C.A)のメンバーであり、それは全国的な母体組織です。これは会員組織となっており、それに従って動いている。これの委員は地域的に全国から送られており、この組織は管理母体として行動し、アマチュアステイクの出走規則を設定し、それによってトライアルの内容を基準化し、勝利者に公式の承認を与える。この承認は、勝利者達にアマチュア・フィールド・トライアル・クラブズ・オブ・アメリカの管理の下に行なわれるレヂオナル或はナショナルオールエイジ又はシューティングドックチャンピオンシップに出場する資格を与える。この組織の管理は基本的には書記のものであり、現在における事務所は、ミシシッピー州ヘルナンドのミス・レスリー、アンダーソンによって大変有能な活動をしている。

 オープンチャンピオンシップは、それぞれ自己の出犬資格を持っており、個々の組織によって催されている。しかしながら彼等は実際には全てのフィールド系指示犬の、全国的な登録団体であるFDSBによって承認を受けており、この組織はアメリカン・フィールド・パブリッシング・カンパニーによって管理されている。

 シューティングドックステイクとオールエイジステイクにおける犬は、この本であなたの訓練の仕事について詳しく記述したのと、全く同様に審査される。種々のステイクやトライアルの各種の審査基準を定めるのは多分一番難しい事だろう。私が試みるより尚有能な人が多くおられると思うが、それでも尚樹立された基準は無い。トライアルは経験の結果により審査される。殆んどの経験深い人々は、種々のステイクについて全く同じ様な要求の概念を持っていると思われる。ポイントを基礎にした詳細な採点法は昔試みられたが、すべて成功した事が無かった。

 パピーステイクの審査においては、犬がどのゲームに対して走らせられるにしても、殆んど全部の審査員が以下の様な性能を審ていると私は信じている。

 1 身体的に充分働く能力があり、外見活動的で嗅覚、視覚、聴覚能の充分な犬
 2 天賦の猟欲、そして鳥を見出そうとする欲望
 3 自主性と大胆さ
 4 ランニングスピード、スタイル、レンジ
 5 決断力と持久力
 6 鳥を発見する能力と正確な鼻
 7 ぐずぐずしたり、他犬の跡を追ったり、地鼻を使ったり、猟鳥以外の不必要なものに気を散らしたりする悪癖の無い事
 8 天賦のポイント能
 9 精神の完成、或いは猟の仕事えの勤勉な入門

 パピーにおいては、訓練のマナーについては特別に審査はされないで、それ以上に彼等の天賦の性能について判定される。彼等が訓練に伴って偉大なシューティングドック或いはオールエイジ犬になり得る潜在能力を持っているか、と言う点に審査の努力が向けられる。パピーステイクにおけるポイントは、その犬がポイント能を示す限り、余り重要ではない。これは単にフラッシュポイント以外にない事も時々ある。フラッシュポイントは以前に述べた様に、鳥臭に際しての瞬間的な停止です。私個人としては、パピーは競技に出犬する前提条件として、少なく共フラッシュポイントがあるべきだと言う事は大変重要な事と考えている。

 ダービーステイクは、パピーステイクと殆ど同様に審査される。繰り返すけれども、理想は完成犬として立派な犬になる様な犬を選ぶ事です。しかしながらダービーにおいては、彼等は訓練を受ける事が出来た点を指摘しなければならない。

 1 彼等はゲームをポイントし、ハンドラーが到着する迄そのままでいなければならない(スタンチネス)。しかしながら飛翔と射撃に不動である事(ステディネス)は不必要です。
 2 彼等が銃声に馴れている事を立証する為に、頭上で発射されなければならない。
 3 彼等はパピー犬より以上に立派な成熟と決断力を示さなければならない。
 4 グランドの状態が許される限り、ハンドルに乗り、ハンドラーの指示に応ずべきです。
 5 既に論じた様な悪癖を持っていてはならない。
 6 彼等は他犬のポイントに対し、それをたたえ(オーナリング)、或はバック(バッキング)をしなければならない。
 7 彼等はパピーの時以上の持久力とスピードを持たなければならない。

 ダービーステイクは、時に審査が非常に難しい事がある。何故なら、これらの犬は丁度中間の年齢にあるからです。或るダービー犬は他のものより早く進歩し、或いは発達する。同じステイクにおいて、スタイル、スピード、レンジ、猟欲等の天賦の性能を他犬より以上に現し、唯彼のマナーはステイク中の他のいくつかの犬程巧く出来てないダービー犬がある。何れの犬を採るか常に問題になる。私個人としては、私がダービーステイクを審査する際は、その犬が訓練をされ得る能力があるか否かを知りたい。彼はこの点をハンドラーへの反応や、ゲームに対するマナーで示してくれるだろう。若し彼がすべての天賦の性能を、上述の如何なる失敗もなく示して呉れたら、彼は私に気に入られるだろう。

 シューティングドックの審査に於ては、審査員は常に高級な演技犬と完璧なレースを探し求めている。

 殆んどの審査員はその様な完璧なレースを心の中に画いて、彼等が審るすべての犬を、彼等の完璧なレースのイメージと比較していると信じている。私について言えば、私は未だかって完璧なレースと言うものを見た事もなく、他の人達も誰も見ていないと思う。誰かが昔言った様に、フィールド・トライアルの完璧な演技犬を記述するのは、丁度完璧な交響曲を記述しようと試みるのと同じ事だろう。以下の事は理想的なレースと考えられる事柄であろう。犬が出走し始めた瞬間から、彼が繋がれる迄の間、彼は次の事柄を示さなければならない。

 1 ゲームを発見するのに完璧な絶え間のない興味(猟欲)を示さなければならない。
 2 彼の競争相手に対する完全な自主性
 3 決断力と持久力。彼のペースは最初から終り迄変化してはならない。
 4 智脳。気流の利用とか探そうとする目的物に対する頭脳的な選択等の様な、総ての機会を捕えて敢然と捜索しなければならない。
 5 協調性。彼はハンドラーの指示に明確に、喜んで従う事を示し、ハンドラーをして、犬をコースに沿って導かせしめる様にしなくてはならない。
 6 望ましい目的物を自主的に捜索し、然も尚コースに沿って前方へ狩り込む様な高度の自然の感覚を持たなければならない。
 7 彼はパターンの一貫性を示し、殊にレンジにおいても然りです。
 8 彼の走法は見守るのが楽しい様に速く、スタイリッシュで優雅であり、しかもリズミカルであるべきです。
 9 彼の態度は真剣であり、且つ円熟したものであるべきで、しかも尚彼はレースを楽しんでいる様に見え、快活さも見せるべきです。
 10 若しゲームの追跡のため必要とあらば、物凄い繁みに立ち向っても、これを突き進む充分な勇気を持たなければならない。
 11 道とか牧草地、踏みつけられた小道等の様な容易な足場のみを走らてばかりいてはならない。
 12 彼は素早く活発に、積極的に、頭を空中高く保持してゲームに近寄らなくてはならない。彼は相手犬より、より多くのゲームを見出さなければならない。
 13 ポイントに際しては、堅実で不動でなければならず、姿勢は崇高にして、大胆であり、その印象は炎の様に烈しく、且つ断固としたものでなければならない。ゲームは正確に指示せられ、ハンドラーによる鳥の飛翔と発射に際してのマナーは完璧でなければならない。
 14 彼は既に述べた様な如何なる悪癖をも持っていてはならず、又ゲームに対し失敗があってはならない。
 15 ハンドラーの手を煩わす事なく、完璧な作法で相手犬を尊ばなくてはならない(バッキング)。
 16 要求されたならば過度の指示を要する事なく、狭い場所を捜さなければならない。
 17 若し不意に翔ったゲームに出会った場合は、ポイントしなければならない。
 18 上述の様なやり方で、ハンドラーの手を煩わす事を最小限にして働かなければならない。
 19 如何なる環境下においても、鼻を地面に擦りつけて捜したり、ゲーム以外のものにポイントしたりしてはならない。

 以上は、シューティングドックが審査されるべき基本的な要素です。同様の事がオールエイジ犬にも適用出来るが、唯オールエイジにおいては、シューティングドックのレンジより大きなレンジであるべきです。

 私は尚これが完璧な記述であるとは思っていない。時に大変似かよった犬達を分ける明白な要素もある。それは舞台における俳優の様なものです。2人の異った俳優は同じセリフを読み、同じ動作をする事が出来る。その場合1人は偉大であり、他のものは又別です。明かにこの事が、バリモーとかオリーバーとかべーンハー等の名優が現れる所以です。私は同じ事が犬でも真実であると信じている。時折あなたは素晴しい犬を見るだろうが、あなたはそれを筆で記述する事は出来ないが、それを見れば分るだろう。これは私がこんなにフィールド・トライアルを好む理由の一つなのです。その真価を認める為にあなたが目撃しなければならない。このスポーツには或る種の空想とスリルがある。以上はフィールド・トライアルについての短い話です。

 若し、あなたがフィールド・トライアルについて更に良く知りたい気持にかき立てられたならば、現に出版されているトライアルに関する素晴らしい本をお読みになる事をお奨めする。それは、「フィールド・トライアル」と言う題目で、ウイリアム・F・ブラウン氏により書かれたものです。若しあなたが近くのフィールド・トライアルに興味を持たれたならば、アメリカン・フィールド・マガジンに相談されると良い。又トライアルを見たいと思われるならば、わが国で行なわれているどのトライアルでも大変喜んで迎えて呉れるだろう。

 今やフィールド・トライアル・フアンは、常にベテランによって快く受け入れられ、多くの援助と激励を受けている。若しあなたが犬を愛し、素晴らしい親交を楽しみ、競争心に恵まれ、又理解ある奥さんを持っているならば、あなたはフィールド・トライアルを楽しまれる事を確信する。


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