私達は既に訓練の基本やフィールド・トライアルの演技犬の基準、そして第一級のシューティングドックの最終的な修正について論じて来た。ここで今迄のすべての概念を纏め、そしてそれにいくつかのものを加え、更にナショナル・シューティングドック・チャンピオンシップを志して見よう。
その様な重要なステイクに勝利を収める事が出来る犬は、わが国にたくさんいるけれども、不適当な訓練やハンドルによっては、それを為し得ないのです。幾人かの読者と不和になるのを覚悟して、私はフィールド・トライアル殊に重要なステイクについて、明確な断言を試みたいと思う。この概念は決してどなたの考え方をも傷つけようとするものではなく、それ所か、読者の方々を勝利者の仲間に結びつけようと申し出ているのです。訓練やフィールド・トライアルに犬を走らせた私の生涯の経験が、喜んであなた方の利益になる事を望んでいる。
我が国の中には、フィールド・トライアルに勝利を収める方法を私が示すより、更に良く適した人々がいるのは疑の無い所であるが、私として初心者に与え得るものを提供しようと思っている。新しい加入者を進歩させ、私達の出来得る限りの方法で手助けする事によってのみ、このフィールド・トライアルと言う壮大なスポーツは成長し続け繁栄してゆく事が出来る。
一般に、オープンステイクの普通のトライアルや殊に重要なシューティングドックステイクでは、参加犬の唯の約20%位の犬のみが、勝つ可能性のある犬です。残りの80%は次の様な犬から成っている。即ち、
1. ゲームに対する態度が適切に完成されていないか、
2. 身体的に立派な演技が出来ないか、
3. 競技時間を通じて、完全な努力を遂げられない様な不適当なコンディションか、
4. ランニング或はポイントのスタイルが悪いか、
5. 競技から自然と疎外される様な悪習を持っているかです。
この様な場合必然的な疑問が残る。第一にこれらの犬はステイクで一体何を為していたか?と言う事です。所有者やハンドラー或は両者の知識の不足が原因する場合がいくつかある。多くの所有者は、勝つ為には何が必要かと言う事を熟知していない。多くの所有者やハンドラーは、所謂ケンネルブラインド(盲)か或は彼等の犬達を可愛がる余り、犬の能力に対して感情的に亢進した概念を持っている。幾人かの人は、彼等の犬は1~2の悪癖を持っているにしても、まあこの特別の日には適当に演技するだろうと考えている。そして他の場合では、訓練者は無意識に或は故意に所有者に誤った説明をする。その所有者は犬を特殊なステイクに出走させる様主張するが、一方ハンドラーはその犬がクラスの下の犬である事を知っている。最後にスリルと名声の為に、犬をチャンピオンシップステイクに走らせたがる人も何人かいると思う。
殆んど同じ様な事が普通ハンドラーにも言う事が出来る。硬い手や、風雪に打たれた顔をし、頑丈な使い馴らされた馬と一緒にもたれかかって、勝利を待ち受けているハンドラーをあなたが見た場合、若しそうでなくとも、彼は少なくとも1頭の立派な犬を用意していると、あなたは確信してしまうだろう。
さて、具体的に考えてみよう。50頭出走のステイクにおいては約10頭の犬が激しい競争を行う。これらの犬にとって、幸運が非常に重要な部分を占める。何頭かのものは、運の悪いくじ引きの犠牲となり、鳥の不足しているコースを走り、或るものは犬の演技を良く見せ難い場所を走る事になる。他のものは悪天侯や相手犬の妨害の犠牲となる。或るものは犬の操作以外の、例えば気難しい鶉の群れや、負傷したり、走っている雉とか、その他彼のステイクを失敗させ得る数多くの他の状況等の様なゲームの不運な状態にぶつかる。
これらのすべての要素は非常に複雑に聞えるかも知れないが、若し私達の犬が適切に訓練され、遺伝的な身体の特質を持ち、適切に調整され、更にコースに対するクジや気候、ゲームそして相手犬等に幸運に恵まれ、勿論若し適切にハンドルされたならば、チャンピオンを獲得し得る10頭の犬の1頭であるべきだろう。
「若し彼が適切にハンドルされたなら」の「若し」がこれから論じようとする事です。「幸運を祈ります」と言う言葉をトライアルの前に取り交わすのを良く聞き、又ステイクの後で「勝利者は幸運だった」と言う事を時々聞いたりする。
実際この観点に立って、ハンドラーは彼の犬をハンドルする事により、又状況が移るにつれて、動作をする事によって彼白身の幸運を作り出さなければならない。ハンドラーはコースを完全に学ぶ事によって自分自身の心構えを作らなくてはならない。コースは何処にあり、探すべき目的物は何処であり、罠が何処にあり、そしてどの場所で彼の犬を立派に見せ得るかを学ばなければならない。なかんずく鳥は一体どこにいる可能性があるかを学ばなくてはいけない。
以上は、ハンドラーが何故すべての組の競技を一緒に馬で走らなくてはならないかと言う理由なのです。トライアルの第一日の終りの時迄には、一体鳥はどの場所を好むかと言う事を含んだ上述のすべての概念を彼は知るべきです。多分この総ては余りにスポーツ的でないと考えられるかも知れないが、しかし今や私達は大きなトライアルに勝とうとしているのです。勝つ為には、他のすべての犬やハンドラーを打ち負かす事が必要です。他のハンドラーで、丁度私の奨めた事と全く同じ事をしている人がいるかも知れないが、そんな時は同じ資格でその人のやり方を見習うと良い。
各組とくまなく一緒に走る今一つの理由は、自分が如何に狩らなければならぬかを知る為に、他の犬が一体どういう事を為したかを実際に知るためです。そして又あなたは結局はトップクラスの犬達が参加する第二シリーズがある事を知らなければならない。あなたは彼等の内の1頭と組んで競わなければならぬだろうし、その犬について良く知る事はあなたに有利であろう。
第一シリーズの基本的な問題は、唯単に素晴らしい演技でトライアルに勝とうとするだけでなく、競技に勝ち残る様に失策の無い良いレースをする事です。
ハンドラーは、出走している間は決して目を犬から離してはいけない。彼が常に失敗の無い様見守っていなければならず、この事はトライアルに勝つ為の最も重要な且つ簡単な要素です。大きなトライアルにおいては、審査員は第2回戦(決勝)に残す犬をなるべくすくなくする必要がある。従ってほんの些細な失策も、その犬を予選で落とすのに充分な理由となるから、勝つ為には犬の失策の無い様保たなくてはならない。トライアルを失敗する多くの失策は、熟練したハンドラー殊に彼が自分の犬を良く知って、信頼感、或は気持の通じ合いを持っている場合(それは殆んど即座の反応となるのであるが)や、コースを知りつくして準備している様な時には、予め予測して、それを避ける事が出来る。トライアルにおいて、ハンドルしている間に起るすべてのタイプの状況を、うまくカバーするのは不可能な事だろう。これらの提案を示す一つの例を見てみよう。
私達の仮想のハンドラーがコースを勉強したと仮定しよう。そして彼が走る事になった、そのコースには彼の犬を良く見せる美しい場所があった。同時に彼はそのコースで鹿を見ていた。ランニングの間彼の犬は極めて素晴らしかった。犬が開けた区域に来た時に、ハンドラーは犬に広い捜索をする様に合図し、犬は相当大きく見える長い繁みを駆け下りてそれに従った。繁みが切れた。犬は次に左に曲って更に開けた場所に走る事も出来るし、又、右に曲って茂った森の際にある小さな湿地に行く事も出来る。若し犬自身の判断にまかせたら、彼は右に曲り湿地を狩り森のふちの鳥を求めるだろう。彼のハンドラーはその湿地の中か、森の傍に以前に見た鹿がいる見込が大きい事を知っていた。犬が繁みの終りの所に近付いた瞬間、ハンドラーは左に曲る様犬に指示した。この様にトラブルを予測する事により、犬がステイクで落される可能性を排除したのです。犬をハンドルしている間に、興奮や緊張を犬に伝えないと言う事は大切な事です。一度び犬が興奮してしまうと、彼はより以上に誤りを犯し易くなる。
ハンドラーは自分自身を落着かせ、冷静に保つ事により、犬をその様にさせる事が出来る。犬が如何に素速くハンドラーの気持を感じ取るかは驚くべきものがある。この事は殊にハンドラーと犬が非常に長い間一緒に暮した場合に著しく、密接な友情の結果として生れた信頼感は、犬をハンドルする上に大変な価値を持っており、殊に重要なステイクでテストする状況ではそうです。この結びつきは、人犬一如と言う点に発展する事が出来るだろう。通常これが劇的な結果を生み、ステイクの勝利の結びつきとなる。
これが「ハウスペットが素晴らしい猟犬やフィールド・トライアルの競争犬となり得るかどうかと言う疑問の答えとなる。永く一緒に過せば過すだけ良い。若しこの密接な友情があるならば、ハンドラーにとって操縦の極限に迄持ってゆく事が可能であり、これは常に最も魅力的であり、犬をトラブルから守るのに十分です。勿論これを可能にするには、ハンドラーと犬はたくさんの時間そしてあらゆる状況下で練習しなくてはいけない。トライアルの前に練習する場合、可能な限りトライアルの状況に似せる事が大切です。若し犬が次にあるトライアルの環境を構成するフィールドのタイプ、人々、競争相手、馬、更にその他のすべてのものに予め準備が出来て場馴れしているならば、彼はより自然に演技する様一段と適している事になる。殆んどの場合、この雰囲気を作り出すのは大変難しく、殊に期待をかける犬が若く敏感な様な時は、出来る隈り小さなトライアルを試みなければならぬ訳です。
若しあなたが、正しく仔犬を選択し、進歩させ、訓練し、調整し、教えた様に扱ったならば、多くのフィールド・トライアルに立派に勝ってゆけるだろう。
最後に一言、あなたの左の尻ポケットに信用の出来る一本の兎の後足を入れて置く様注意し給え。 (兎の後足は幸運のお守りとされている。訳者注)
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