HAMAKAZE jj: 第7章 最終的な家庭訓練

2018年12月10日月曜日

第7章 最終的な家庭訓練


 私達の犬は楽しい狩猟の日々を与えてくれるとは言いながら、まだまだ完成されたシューティングドック(実猟犬)とは申し難い。たとえ彼によって鳥を撃ち落とす事が出来るにしても、訓練は尚完成迄続けなければならない。すべて訓練のプログラムは一つ一つの堅実な前進であるべきです。一旦若犬が訓練のプログラムを出発したならば、若しこのプログラムが正しく行われた場合は、何等それを妨害する邪魔者なしに、完成迄犬は非常に良くそれを成し遂げるように思える。

 昔の人の言った「老犬には新しい技術を教える事は出来ない」という言葉には確かにどこか真実がある。訓練過程にある若犬は成犬に比べてより易しく、そして早く学ぶように思える。また、二人或いは更に多くの人々の手を借りて訓練された犬に比べて、たった一人の訓練者から全部を通して訓練された犬の方がより早く進歩し、そして又より良い結果を生むように思える。ただ一人の方法に馴らされた若犬の殆んどのものは、新しい次のハンドラーに順応するのには、かなり調整を要するようです。成犬においてはこの点は大変優しい。



 全く見知らぬハンドラーに対して、何時もの馴れたハンドラーに対すると殆んど同じように良く演技する犬を見た事があるが、これは例外であり、決して原則ではない。彼の訓練の次の部分は、彼の家庭訓練を終え、ゲームに対してブレイク(調教)する事です。今迄の彼の家庭訓練では、彼等にノー・ウォー・カムイン・ステイ・そしてオーライの意味を教えた。

 彼は今やヒール(あとへ)・シット(坐れ)・アップ(飛べ)・ダウン(伏せ)そしてイン(入れ)の命令語の意味を教えなければならない。これらについての一般的な技術は、今迄他の命令語を教えて来たのと全く同様です。家庭訓練では私達がこれらの新しい言葉を一つずつ加えてゆくのみで、あとは今迄と同じように行う。

 先づ最初に「ヒール」という命令語を考えてみよう。平常の家庭訓練と同じく、今迄の命令語を復習した後に、彼に短い綱をつけ、犬をあなたの左側に引き寄せ、彼の頭が丁度あなたの膝の所に来る位にします。そして彼と一緒に歩き、引き綱で彼をこの位置に保たせる。そうしながら、「ヒール」という命令語を優しく、しかも確固たる口調で命じます。彼が前に出ようとした時はその都度「ヒール」の命令を与え乍ら綱で引き戻す。あなたが7~10m歩き、彼が上手に出来たら、立ち止まり優しく言葉をかけ褒めてやります。若し引き綱で彼をその位置に保つのが難しいようならば、ムチを右手に持ち、前に歩きながら穏やかにそれを振りなさい。若し必要ならば彼を後につけるために顔を静かに打ちます。ゆるい紐や、あなたが方向を変えても彼がそれに従い、後につく事が出来るようになる迄、上述のように訓練を続けます。但しレッスンは短くするよう気をつける。

 大体4~5回のレッスンの後に、彼は大変うまく出来るようになるだろう。そうしたら引き綱なしでやってみる。若し彼が先の方に飛び出してしまったら「ウオー」を命じ、後に連れて来て最初から又始める。こんな時は尚2~3回引き綱をつける必要があるかもしれない。しかしなから、彼が如何にこの言葉を早く習得するかに驚く事を確信する。このレッスンを何回も繰り返し徐々に別の場所でも試みてみる。そして猟の前後に野外でも試みてみる。

 繰り返すが、若し彼に「ヒール」を命じたら、それを確実にさせ、若し命令に直ちに服従しなかったら、後につけるようにさせる準備をして置かなければならない。鳥を狩る猟野においては、直ぐ猟を始めたり、あなたから遠く離れてしまうのではないかと心配されるかも知れない。後につきたくないという犬の性癖は非常に強いものであるが、又、繰り返すが決して妥協してはいけない。一旦彼に「ヒール」を命じたならば、あなたが彼に他の言葉即ち「オーライ」の指図を与える迄は「ヒール」しているのを眺め給え。とりわけ、この指示無しに彼を「ヒール」から解放してはならない。それは、これをすると全体の訓練原則に対して筋道の通らない事になるからです。

 彼にあなたの支配外だと思わせてはならない。仮りに彼を「オーライ」の言葉で「ヒール」から解いてやった場合、そこで彼は自分の好きな事が出来るが、しかし彼は唯あなたの許しのもとにそれをしているのであり、何物とでも一緒には遠くへは行かないのだという事を知っているのです。

 「ヒール」を彼が学び、それを完全に行うようになってから、「シット」を教える。これをするには、彼に「ウォー」を命じ、そっと彼の鼻づらを右手で握り、頭を後に圧してやる。そして彼が座っている姿勢をとる迄後脚と臀部(尻の部分)を左手で押し下げる。同時に優しく、きっぱりとした声で「シット」を命ずる。
 最初の数回はこのままの姿勢で彼を押さえて置く必要があろう。これを余り抵抗しないで2~3回出来るようになった後に優しく言葉をかけ褒めてやる。彼が命令語を理解する迄、何回もこの演技を繰り返す事が必要だろう。何回かのレッスンの後に、彼は何等力を加える事無しに完全に習得する。時にはムチで尻を叩いてやる事が必要な事もあろう。「シット」の命令を与える時は常にそれに先立って「ウォー」を命ずる。或るハンドラーは、「シット」の命令を与える前に右手を犬の前に挙げるのを好む人もいる。しかし私はこの必要を認めない。

 このレッスンを何度か繰り返し、その後他の何時もの家庭訓練を復習として加えなさい。座っている姿勢から解くには「オーライ」を用い、訓練期間中は、それに優しい言葉と褒めてやる事を忘れてはいけない。「シット」の命令を解放の指図なしには決して離れさせてはいけない。若しそうしたら彼は何時もその姿勢から離れ、それによってあなたの命令に服しなくなるだろう。

 あなたの命令の一つでも彼が服従しないような事があると、あなたの彼への支配力を崩す恐れがある。

 彼が「シット」の命令を完全に会得した後に、それを彼の平常のレッスンに加え、更に次の命令の「ダウン」を教える。その原理は「シット」と同様です。「シット」と彼に命令し、右手で彼の前肢を前にはずし、彼が伏した姿勢になる迄、左手で肩を下に押してやる。同時に彼に「ダウン」を命ずる。これは「シット」の時にしたと同じように繰り返す。そして優しい言葉をかけ褒めてやる。この姿勢から解放してやるのは「オーライ」の言葉です、それを決して怠ってはならない。彼が「ダウン」の意味を理解した後に、それを素速く行わせる為にムチを優しく用いるのは大変有効だろう。彼がこれを完全に会得したら、彼のおきまりのレッスンにこれを加える。最後の二つの命令は他の目的よりも特に車や家の中における行儀の為のものです。

 次の命令の「アップ」は猟野において好都合です。若し「アップ」の命令が与えられたならばあなたが彼に命じた如何なる障害物(例えば、とげのついた針金の垣や横木の垣等を含む)であっても、彼の体に可能な範囲ならば、飛び越さなくてはならない。これを教えるには柵を用いる。幅30~40cmで長さ2.5~3mの厚板がこの目的に最適です。これを横に置いて二つの杭棒で支える。

 先ず犬に対し厚板に向かって「シット」を命じ、あなたが板を挟んで反対の位置にゆく迄そこに留まらせる。そして「オーライ」の命令を与え、厚板の上から一かけらのドッグビスケット(菓子)を使って巧みに犬を誘い出す。同時に「アップ」の命令を与える、これをあなたが「アップ」を命令したら犬が素速く飛び越す迄繰り返す。彼が命令の意味を理解したら、次第に板の高さを増し、60cmから1mまでにする。常に「シット」の位置から行い、出来たら優しい言葉をかけて褒めてやる。若し彼が板の端を回って来てしまうような事をしたら厳しく「ノー」と命じ、元の位置に戻し、始めからやり直す。この場合、繰り返すがただ一言の「アップ」を用います。私はこの命令を与える時は指をピシッと弾き、手を障害物の上を飛び越すように振ってやる。

 いくつかの犬は命令なしにただ単にこの動作だけで良くジャンプするが、これは個人的の好みです。犬が「アップ」の意味を完全に会得したら、他の障害物について試みさせる。この印象を新にさせる為に、時々厚板の所に連れ戻る事が必要だろう。彼が良く出来るようになったら、これを彼のおきまりのレッスンに加え、出来るだけ猟野で用いて下さい。混み入った垣等に出会った時は、私は犬を呼び寄せるようにしている。そして彼が垣を飛び越した時には、その為にひっかいたり負傷をしないかを見る為に一緒に残っている。

 次に彼に教える言葉は「イン」です。これは彼を犬舎や輸送用犬箱の中や、ドアを通らせたり、或は乗り物の中に入れようとする時に用いる。これは又、彼の行儀の為に行うものです。そして犬が行儀良くするのは何と気分の良い事だろう!犬に「イン」を教えるには、先づ犬舎のドアの前で「ウォー」を命ずる。次にドアを開け彼の左側に立ち、右手で彼の首輪を持ち、犬が入って欲しい方向に左手を振り乍ら犬舎の中に引き入れる。これを為し乍ら、何時もの確固たる口調で「イン」を命ずる。彼が入った後に優しい言葉をかけ褒めてやる。犬舎に帰って来た時にはその都度必ずこれを行うようにする。

 彼が言葉の意味を理解した後に、例えば車とか輸送用犬箱とかのような他の場所でこれを行い、彼が全く完全に応ずるよう試みます。あなたが犬を入れようと思う方向に手で指示する前に、必ず「ウォー」の位置に犬を置くようにする。彼が「イン」の意味を理解した後に猟野において、彼の狩のパターンを指示するのに数多く用いなさい。例えば或る茂みを犬が狩らないで済ませ、あなたはそれを狩って貰いたいような時、その茂みの一隅に彼を連れて来て、手を用いて「イン」の指図をします。繰り返すが若し彼があなたの命令に服しなかった場合でも、自然に茂みの中に入らせる事が出来るように心構えしてからにします。彼は多分真直に入ってゆくだろう。

 このように繰り返している内に、単に彼の名前を呼んだだけで混んだ茂みの中に、彼を導入する事が可能となるだろう。彼があなたに連絡をとった際、茂みの方に手を振って「イン」を命ずる。彼の進歩につれて、あなたは非常に遠くの位置から、この方法を用いて犬を茂みの中にやる事が出来る様になる。

 猟野において「イン」の言葉を用いる場合、犬を呼び寄せて先づ「ウォー」を命ずる事は必要ないけれども、犬がこの域に達する迄は、それを用いるのは賢明な事です。

 運搬を除いて、これで大体適切な言葉を網羅した。しかし若しあなたが欲するならば、犬達がそれを理解し、消化し得る能力があるかと言う事を考えながらであれば、尚言葉を追加する事も出来る。あなたは犬の能力の判定者です。彼に如何に多くの命令語を教えるとしても、その家庭訓練のレッスンの度毎にそれを復習します。あなたが彼に命令語を教えた順序に用いるのは良い事です。やがて彼がそれを使えるようになって来たら、お互いに混ぜて使い始めなさい。我々が網羅して来た命令語はシューティングドックをハンドルする上において、すべて必要なものである事に注意して下さい。

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