実猟射撃の唯一の訓練方法はクレー射撃です。
しかし、目的が狩猟ならば、クレーを粉砕し得点を上げるだけの練習では意味がない。猟銃を所持して間もない頃
「鳥に当たらない、どうすれば当たるようになるのでしょうか?」
大先輩に相談すると良くこんなことを言う。
「実猟の練習は実猟しかない。クレーよりも鳥を撃たないとダメだよ」
何度も言われてきました。
そもそも射撃場は見通しが良い。
クレーは初速が早く飛距離を伸ばすほどに減速し、一定の放物線を描いて飛ぶ。
鳥は予測のつかない飛行線を描いて加速しながら飛び抜ける。
見通しがきかない猟場では、鳥が見える時間も一瞬です。
それを落とすには、犬と呼吸を合わせ、飛ぶ方向を確認したら一瞬で矢をかける必要がある。
クレー射撃と実猟射撃は、全然違って当たり前で本当にその通りだと思う。
最高の練習は、乱場で出来るだけ多くの鳥に出会い、飛鳥射撃を経験し実績を積むこと以外にありません。
事実、先輩達は実際にその通りやってきたのです。
彼らが狩猟を始めた昭和30年代当時は、猟場にも恵まれていたので
一度出猟すれば、雉・小綬鶏で数10回も鳥に当たりました。
初猟の頃は、朝一の鴨猟で弾帯一杯25発を撃ち切り、一度帰宅してから弾帯に挿し直して犬と出かけて行き、射撃の練習よろしく犬の鼻先から飛び出すゲームに、すべて消費することもあったようです。
そんな時期を通ってきた人達に「当たらない」と言えば
「出猟してないからだ」「鳥を撃たないからだ」と叱られるのは自然なこと。
それを、今現在の狩猟に当てはめたらどうか?
鳥との出会いは一日中歩いても1度か2度程度。
だから、猟場で実猟の経験を積むのは、ちょっと無理があるのです。
鳥を撃ち、鳥を狙う。
同じ場所に何度も通って、ゲームの飛ぶ方向を経験すればある程度の予測はつきますが
それだけでは射撃の技量は上がらないのが現状です。
では、実猟射撃の為に何をやれば良いのでしょうか?
よくよく考えてみても、クレー射撃で射撃の基礎を固める事。
それを猟場で活かすことぐらいしか無いのです。
基礎的な技量とクレー射撃の専門的な技量
今回は、技量”テクニック”のお話しです。
ハンターの間には2つの相反する意見があります。
クレー射撃で実猟射撃の技量を上げようとする人で
「クレーが当たらなければ鳥も当たらない」
とする人と、
「そもそもクレーと鳥は別物である」
とする人の意見です。
どうして同じハンターでも意見が食い違うのか?
それは「基礎的な技量」と「クレー射撃の専門的な技量」混同するためです。
クレー射撃と実猟射撃は、似ている点が多い。
クレー射撃で得た技量は実猟で役に立つ部分は多い。
また、実猟で覚えた技術はクレー射撃でも役に立つ。
その共通な部分が「基礎的な技量」です。
ところが、共通する部分だけではなくて、全く逆の現象が出ることも少なく無い。
非猟期中に、クレー射撃を撃ち込んで技量を上げた場合、次の解禁日には以外と成果が上がらない事実がある。
つまり、クレーと鳥の間に特別な何かがある。
それが「クレー射撃の専門的」な技量です。
クレーが当たるようになると鳥が当たらなくなる
目標を狙い、撃ち落とす。その技量なので、鳥もクレーも同じ技量です。
例えば、クレー射撃を頑張ると、基礎的な技量が身につき実猟射撃も上手になる。
したがってクレー射撃の得点が上がれば実猟において効果が出るはず。
ですが…
しかし、そうともいえない事実がある。
クレー撃破の点数が上がった以上に鳥が獲れる訳ではない。
それどころか、クレー射撃の専門的な技量は実猟射撃の妨げとなる場合も少なくない。
だから「クレーが当たるようになると鳥が当たらなくなる」
これは、必ずしも否定できないのです。
非猟期中に射撃場に通って、今までは10~13点だったものが猟期を迎えるまでには20点付近まで当たるようになる。
犬も仕上がって射撃も上手くなった。
今年は豊猟が期待できるし自身の最高記録を予想して解禁日を迎える。
今日こそは、意気揚揚と鉄砲担いで出猟する。
いつものフィールドで、犬がポイントした。
ハンターはその後ろにそっと着く。
もう何度も来ている慣れた猟場だから、飛び去る方向はおおよそ確認済み
そこでイメージトレーニングしてもう一度復習する。
「クレー射撃のようにコールして、犬を飛び込ませて鳥を出す。
大きな羽音と共に飛び去る雉に追い矢を掛け、一瞬で撃ち落とす。」
今まで、何度もこの時の為にトレーニングしてきた。
犬のポイントが熟すまでがとても長い。
犬の全身の筋肉が緊張して狙い定めた尾が止まる。
瞬間!犬に飛び込ませ
肩付け頬付けを一瞬で終わらせ引き金を引く
いただきまーす!
ドッパーン
初矢を外した!?
間髪入れずに狙い込んで二の矢!!
ドッパーン?
失中w
なぜ当たらないのか?
クレーとスピードが違うから狙い越しが違うのか?
頭では分かっているのですが、思わず銃口が走って鳥の先を撃ってしまう。
それならば、狙い越しを調整しようとすれば、今度は引き止まりを起こして後ろを撃つw
落ちてこない獲物に犬は呆れてる。
銃が違うからコレなのか?
獲物が大きくて遅く見えるのか?
猟場と射場では距離感が違うのか?
自信を持って撃ったものが、ことごとく失中する。
結局、どこを撃って良いのかわからなくなってしまう。
気がつけば既に夕暮れ。
痛恨のボウズ。
これが、クレー射撃の専門的な技量による、実猟射撃の弊害です。
クレー射撃の専門的な技量は実猟射撃では意味がないのです。
クレー射撃は実猟射撃の妨げになるのか?
失中を繰り返しても、原因を探って工夫をしていると、いつの間にか頭の中の回路が修正されてだんだんと鳥に当たるようになってくる。出猟にして数回程度の時間がかかるけど、荒ぶるエイムも落ち着いてきて
最終的には、クレー射撃で鍛えた基礎技量が上がった分だけ当たるようになる。
少ないチャンスの鳥を撃っても上達するとは考えにくいので、実質的には射撃練習した分、進歩が残っていることだと思う。
猟友会や公安委員会が射撃練習を勧めるのは、銃器の安全な取り扱いに習熟して事故を起こさないのが目的です。
しかし、ハンターの側からすれば一羽でも多くの鳥を手に入れるのが目的。
そこで、猟主体の必要最小限程度の練習射撃しかしてないならば、やはり実猟の訓練は「実際にフィールドで撃たないと腕は上がらない」となるでしょう。
初猟の頃に鳥に当たらない現象は、クレー射撃の後遺症に間違いないのです。
これを猟場に持ち込むのなら何の為の練習かわからなくなってしまう。
個人の実力により「実猟の役には立たない」と批判されても仕方がないけど「全く役に立たない」と決めてしまうのも少し違う。
原因はハンターにある。
後遺症の大半はハンター自身に原因がある。一口にクレー射撃といっても、トラップ射撃であったりスキート射撃だったりします。
やり方次第では、必ずしも実猟の妨げになるとは限らない。
要は取り組みの問題です。
具体的にどこに問題があるのだろうか?
僕の場合、明らかに「スピードの速いクレー、動きの早いクレー」に慣れると後遺症が酷いのです。
猟期が終わり、最初は練習セットで撃ってますが、そこそこ当たるようになると、公式セット、さらにのトラップ屋向けに放出機の性能いっぱいまで上げた、速くて左右に広角にキレてくクレーを撃ちたくなります。
高速で飛んでくクレーに自分の撃破点を予測して散弾をバラまいて獲る感じはクセになるし、全く当たらない訳でもないw
とんでもないスピードで逃げる目標を撃つのはとても気持ちが良いのです。
あまり速いクレーに慣れすぎると、今度は遅いクレーが当たらなくなる。
要は、解禁日寸前に実猟を想定して練習することが必要で、競技とは別物と考えて
自分の実力以上の難しいクレーを撃たないことです。
自分の技量に見合った優しいクレー
才能のある人は、初めての技能講習で20/25点撃つ人もいるようですが僕はそれには恵まれておらず、2点でした。
それから、しばらくストレートだけ撃ってましたが一向に上手くならない。
射撃教本や全猟誌などの雑誌を読んでも、実際に射台に入ると上手にできないことばかり。
毎回2点。
今思えば、頬付け肩付けが定まらずに、狙点がバラバラで肝心な基礎が出来てなかった様です。
周りの爺に、もっと早く獲れとか言われてたので、狙い込みすぎて撃ち遅れたりしてることが殆どだったのかも知れません。
それでも毎週ストレートだけを2ラウンド撃ってると、ある日突然、急に当たるようになりました。
20点程度まで当たるようになると、ランダムで飛ばしてもすぐにそのくらい当たる様になります。
クレー射撃を始める人の殆どが僕と同じように、射撃場でしっかりした人から基本を教わることなく、数を撃って我流で習得してる人が殆どのように思います。
基礎が無いから当たらなくなると、戻るところがなくて結局は離れていってしまう。
猟期前の実猟射撃の練習
猟期前の実猟射撃の練習は、基礎技量の確認を行うように、段階的に初歩的な射撃から行うことが必要と思います。トラップ射撃を例にとると、まずはフィールド射撃用の遅いクレーで、放出口から5mの1発撃ちでストレートだけを十分に行う。
8割取れたら、放出口から10m、15mとレベルを上げていく。
遅い練習セットでランダムに挑戦して、軸を意識した丁寧なスウィングを意識して練習する。
要は、基本を確認しながら無理なく段階を踏んで、基礎技量を確認して積み上げていくことが必要です。
自分の基礎技量を上げることで、実猟射撃も上手になるのです。
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿