HAMAKAZE jj: 第13章 調 整

2018年12月16日日曜日

第13章 調 整


 シューティングドックの調整という主題についての以下の提案や、観察は実際的な経験の結果であり、決して犬の栄養学の形式的な勉強の影響によるものではない。この問題に関しては、多くの議論の余地のある考え方や慣習があり、又厳格に守られている秘密の方法等がある。いろいろな犬について、そのコンディションの調整の方法が如何に違うかという点を注目するのは大変興味のあることです。フィールド・トライアル愛好者の説は、橇を引かせる犬のそれとは可成り異なるし、同様にグレイハウンドのそれとは又、異なっている。又、犬のコンディションの調整は年と共に如何に変って来たかを学ぶのも又興味のあることです。約100年前、イングランドの獣猟犬は、肉食は筋肉を固くするだろうという考えから、完全に肉を無くした食餌を与えられていた。



 今日では、肉は犬のコンディションを適切にするのに大変重要なものと考えられている。偉大なシューティング・ドックがナショナル・チャンピオンのタイトルを争うような場合は、時に調整は栄冠を左右する。チャンピオンは、その完璧な努力を演技の窮極における迄耐えなければならない。フィールド・トライアルチャンピオンの調整は、他の如何なる立派なシューティングドックとも多少異っている。

 それは仔犬の誕生から始まる。幼犬は立派な生育の状態に保たれなければならない。彼の骨格は良く発育し、しかも尚脂肪はつき過ぎてはいけない。肋骨の開きは成犬と幼犬とでは明らかに異りがある。幼犬の骨は軟かく、もし彼等が過剰の体重を持っている場合は決して適切に発育しない。成犬の圧し潰された肢は、生れつきの、或は遺伝的のものであると誤って考えられがちであるが、殆んどの場合、発育時期の過剰な体重に負うものです。

 仔犬達は殊に寄生虫に傷つき易く、それはもし、何度も感染したり、長期間放置されたりすると、生涯に残る打撃を受けることがある。この状態は腸管内における慢性の刺戟の結果によるもので、これが犬を最良のコンディションに到達するのを妨げている。寄生虫はすべての犬にとって尽きることのない疾病であり、これによって彼等を最良の状態外にさせてしまう。

 犬は大抵一つや二つの寄生虫の侵襲を受けているので、犬の完全無傷な状態を来すのは仲々難しい。内外よりの殆んどの寄生虫に対し、直に有効な薬が出来ているが、あなたの犬を少なくとも6か月毎に検査をし給え。もし南部の方に猟に行ったら、殊に心糸状虫(フィラリア)や、鈎虫(十二指腸虫)等に注意し給え。この寄生虫は、あなたの犬の演技に可成りの害を及ぼし、場合により致命的なものです。耳に寄生する「チーズダニ」も他の一般的な寄生虫です。多くの所有者はこれを、ひどくなる迄無視してしまう。そうこうする内に犬は、何か月も不愉快さや苦痛に耐えなくてはならない。あなたの犬が頭を振ったり、耳を掻いたりするようであったら、自身で診てやるか、或はかかりつけの獣医さんに連れて行きましょう。

 運動は発育期の犬にとって大変重要な事であり、十分な運動を与えられている仔犬達は早くから落着き最高に調整され、立派な成犬に発育するだろう。多くの訓練者達は、犬は年に数カ月休まなくてはいけないと信じているが私は自分の犬を一年中を通じて何時も働かせるようにしている。最も理想的な運動は、積極的な野外運動であるが、もしこれが不可能なら車に乗って田舎道を走らせるか、馬に乗り背負革をつけて道を走らせることにより、これが出来るだろう。私は車のフレームで作られた四輪の手押し車を考案した。フレームを露出し、短くした後に、ブレーキとハンドル機構を変更し、丁度四輪軽馬車が走るようにしてある。16頭位の犬を縦に並べて引張らせ、田舎道を素的な具合で走り回わることが出来る。それは殊にシーズンオフの訓練に良く適しており、僅かに2頭でも用いることが出来る。

 犬を運動させる場合、彼の身体の限界を越して迄強制してはいけない。或る犬は異常な決意と、猟欲によって、永久に自分をこわす程迄に走ることがある。暑い季節におけるオーバー・ワークは殊に注意して欲しい。夏の運動は未だ露が地上にある内の夜明けに行なうべきです。シーズン中を通じて、殊に犬のあしのうらが未だ柔らかい始めの頃は、あなたの犬の足が負傷したり裂けたりしていないか検査し給え。或る道路の表面は他のものより余計早く犬のあしのうらを傷つけることがある。霜が降りるような季節には、あなたの掌をしっかり圧し乍ら2・3回、彼を働かそうと思う場所の地面を擦ってテストして見給え。もし掌が傷つくようなら、犬のあしのうらも傷つくだろう。こんな時に彼に休みを与え、より良い気候を待つことだ。又、あしのうらの爪も検査する。もし磨り減っていなかったなら短くするのが賢明です。

 食事は一般的な調整にとって大切な要素です。今日宣伝されている食物は、食餌の問題を非常に単純化している。良く知られている製品の殆どは、品質調整管理の許に試験され製品化されている。多少蒸気でむした骨や肉、そして自然のタラの肝油を加えることによりカルシウム、リン、そしてビタミンA、ビタミンDを十分に保証することが出来るだろう。犬は烈しく運動するにしても、1日に2回食事を食べれば良い。通常は食品製造者の指示は妥当です。カン詰の肉は、彼の食事に味をつけ、烈しく働く犬が必要とする他の動物性蛋白質を供給することになる。2・3オンスのラード或は羊脂を彼の毎日の食事に加えることは、寒い冬の期間に必要なエネルギーを供給することになる。

 すべての食事は食物の味と香味をもたらす為に温くしてやらなければならない。冬には殊に温い食物はエネルギーの追加になる。もしあなたの犬が、つやつやと良く育って行かぬような時は、あなたが用いているドッグフードを分析して見る方が賢明であろう。いくらかのドックフードメーカーは、彼等の製品を説明するのに多少不注意なことがある。暫く前、ドッグフードメーカーは彼等の製品について大変誤った説明をしていたものです。それによる食事の結果は唯単に、その犠牲となった犬のコンディションが目につくだけでなく、幼い仔犬達がクル病に罹ったり、或はコンディションが改善される前に何頭も死亡したりした。何カ月かの研究の結果、その製品は必要な分量より可成り少ない蛋白質しか含んでおらず、完全なドッグフードとして重要な他の成分にも不足していることが分った。更に多くの月日をかけた訴訟の結果、メーカーは莫大な、そして完全な賠償を為した。この実例はドッグフードのあらゆる品種のメーカーに、彼等の製品についての適切な説明をすることの重要さを警告した。もしあなたが、食事による良い結果を得られなかったら、用いているドッグフードを調べるのみでなく、評判の良いメーカーの製品と変えると良い。

 犬を立派に調整する為にはあなたは、時に応じて犬の体重を調整するが良い。これには犬は適切に食べる事を覚えなくてはならない。犬は1日に2回か3回給餌することにより、適当に食べる事を訓練する事が出来る。彼の食欲が烈しくなるにつれて、次第に食物を増してやる。もし彼が如何なる理由にせよ食べるのを止めたら残っている食餌を取り去る。やがて彼はあなたが与えた食餌のすべてをいち早く食べることを学ぶだろう。1回づつ手で給餌してやる間は彼に決して食べすぎさせたり、どんな食物でも犬舎に残してはいけない。彼がこのような食事の習慣を会得した後に、犬の体重を食事の増減によって調整することが出来る。働かない犬種に対して好きなだけ自分で食べさせる方法は良い。もしあなたの犬があまり烈しい働きをしないならば、自分で好きなだけ食べさせる方法は大変便利であり、又、全く安全です。殆んどのメーカーは、この自分で食べるだけ食べる方法を取っている人の為の製品を持っている。最初の数日食べすぎるからと心配する必要はない。

 彼は間もなくこのような給餌法に馴れ、稀な例外を除いては良いコンディションを保つものです。骨付きの肉や、天然の肝油は給餌者によりドックフードに掛けて与える。ラードとか羊脂は手で与えてよい。自分で好きなだけ食べる方式を用いる際は、新鮮な水を十分与えるよう注意する。食卓の残りは商品のドックフードと一緒に与えて良い。然し骨はあまり効が無く、場合により、大変な故障を来たすことがあるが、犬達はそれを噛んでいる時は喜んでいる。

 犬を調整する場合、あなたの要求する事が、犬にとって身体の限界内かということを注意すべきです。犬の完璧な演技を妨げる二つのむしろ一般的なハンディキャップがある。一つは通常成長期における不適当な栄養による結果のクル病です。カルシウムと燐の比率のアンバランスやビタミンDの不足等が最も普通の原因です。クル病に侵された犬の骨はカルシウムの不足により軟らかくなり変形し、そのまま固まって半不具犬となる。このような犬の症状は普通趾とか脚に出現する。他の不調としては股関節の生来の或は遺伝的の奇形と言われる股関節発育不全や亜脱臼です。もし犬が歩調の不規則や後肢や臀部をいたわるような傾向が見られたら、直に犬の骨盤のX線写真を撮った方が良い。殆んどの獣医師は左程困難なくこの疾病を診断出来る。股関節発育不全は普通進行性に悪化する。犬にとっては後脚を使うのが次第に苦痛に満ちたものとなって来るだろう。非常に難しいことであろうが、この病気の診断が確実となったら、直に犬を取り替えなくてはいけない。

 犬の輸送について一言申上げたい。何故ならば、これは彼の仕事の出来映えの上に大変重要な関連を持っているからです。自動車のトランクは犬を運ぶのに決して良い場所ではない。もしあなたが、この提案に疑問を持たれるなら、あなたが試みにトランクに入り友人に蓋をしめて貰い、2~3時間田舎道を走ってみることだ。その後で外に出て2~3km走って見給え。犬は自分で景色を見、そして快適であるならば車で走ることを喜ぶだろう。普通の旅では空腹の状態の方が良く、猟を始める前にカン詰の肉に少量のブドウ糖を混ぜた軽い食事を与えた方が良い。猟野で寒い日であった後には温い食事を与えるよう気をつける。いく人かの狩猟家はこれをしようとしない。

 要するにあなたの犬を健康に、気分良く、楽しく、保たせるようにすれば、彼は演技を素晴しくしてあなたに酬いてくれるだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

adsense

!!