HAMAKAZE jj: 第11章 追加訓練の仕上げ

2018年12月14日金曜日

第11章 追加訓練の仕上げ


 現在の時点において、この犬が一般の狩猟家達には良く適合するだろうとは言い乍ら、もしあなたが眼識のある猟人の殆んどの人を満足させるような犬を望むならば、尚補い得るいくつかの追加訓練がある。彼を現在の段階に迄完全に進歩させて来た後(殊にあなたが犬の訓練は如何に容易く、且つ面白いものであるかに気が付いた後)には、あなたは疑いもなくこれらの幾つかの追加事項の完成を続けたいと望むだろう。もしその犬が、並の智能と性質を持ち、あなたが一緒にここまで遙々と到達したのであるなら、既にあなた達二人の間に存在する緊密な友情があるので、彼に追加を教える事については左程難しいことはないだろう。彼の心は今やあなたの教育を非常に受け入れ易い状態にある。



 この追加的な仕上げの中で最も重要なのは、他の犬がポイントしている時にバックするのを教えることだろう。バッキング或はオーナリング(同じ意味)とは、犬が他犬のポイントしているのを見るや否や、ポイントのポーズを示すことを言う。この目的は他の犬が狙った鳥を、彼が不用意に翔たせないようにする為です。私は不用意と言ったけれども、或る犬は嫉妬や対抗意識から他犬が狙った鳥を翔たせたり、ポイントを盗んだりする事がある。バッキングの際は、その犬は自身がポイントしているかの如くに余念無く炎のように烈しくあらなければならない。鳥が飛翔し、銃が火を吹いても彼はその儘で残り(ステディネス)、オーライの命令がある迄は動いてはならない。

 もしポイントしている犬のハンドラーが、鳥の居場所を犬に再度指示するよう犬を前に出した場合には、あなたの犬もそれに続いてゲームを再指示するよう試みるのは大変結構なことです。ときには、バックしている犬がいらいらして来て、その場面に近寄ろうとすることがある。

 これは許してはならない。ポイントしている犬が動くか、あなたが彼に動くように指示するかの何れか以外は、不動のまま留っていなくてはならない。彼にバックを教えるには、既にゲームに対してブレイキングの出来ている他の犬と一緒に働かせ、彼に約8mの長さのチェックコードをつけて走らせる。他の犬がポイントに入ったら、あなたの犬に「ウォー」を命じ、チェックコードを手にとる。そしてコードを手に持ち乍ら、ポイントしている犬の方向に働かせる。彼がポイントしている犬を見付け、自発的に止ろうとしなかったら、「ウォー」を命じ、彼が最初ポイントし始めた時と同じような方法で彼を扱い給え。優しく話しかけ、彼をさすり、ポイントしている方向に後から圧し出してやり給え。もし、動こうとしたら、コードをグッと引っ張り前肢をムチで叩き「ウォー」を命ずる。

 彼があなたに引き止められないでも立ち止っている場合は、他のハンドラーに彼の鳥を翔たせるよう頼み給え。あなたの犬は不動のまま残るだろう。もし動いたら飛翔と発射の際、ブレイキングを破ったと同様に扱い給え。即ちチェックコードで急に彼を引き戻し、必要あらばムチで打つ。それから彼を最初の位置に戻し、ポイントのポーズをとらせ、少なくとも5分間はそこに留らせる。彼が自分自身でこれをやる迄繰り返したらチェックコードを外しても良い。もしあなたがこの仕事を言われた通りに従うならば、あまり難しいことはない。

 多くの犬は極く最初からバックを自発的に行なうものです。バックは明らかに或る犬達が、他の犬より非常に高度に持っている遺伝的の素質です。繰り返すが私の系統のポインタ達には、殆んどバックを教えなければならない事が少ないので大変幸運です。昨年の春であったが10週目の仔犬8頭と竿につるした鳥の翼を持ち乍ら歩いている時、全部の仔犬が、或る1頭が翼にポイントすると残りがそれにバックし合い、何度もこのように、お互にしていたことがある。これらはエルフユー・ジャングルの娘から生れたエルフュー・ハックルベリーを父に持った仔犬達である。2・3頭の素晴らしいシューティングドックがお互のポイントにバックし合っているのを眺めるのは、誠に感動させられるものである。

 あなたが、追加を希望されるであろう今一つの仕上げ訓練は、あなたの犬をホイッスルで狩らせるようにすることです。私達は今迄、ホイッスルを訓練に用いるのは犬を走らせる時以外には考えなかった。しかし、それは犬を猟の捜索に指示するのに有益な道具です。この段階までは私は、犬を近寄らせるのに犬の名前を用いる事で行なって来た。もし彼を或る狭い場所に持って来ようと思った場合は、「カムイン」と共に彼の名前を呼ぶことにしていた。この目的に笛を用いることは大変便利なことであり、且つ更に効果的でさえあることをあなたは見出すだろう。今やホイッスルは犬をあなたの所に呼ぶのみでなく、彼の走行パターンをあなたが居る場所の前の方に合わせるべきものであることを犬に知らせるようにしよう。この目的にホイッスルを使用する場合、あなたがどこにいるかを彼に十分知らせられるように、それをしばしば長く、柔らかく、転がすように鳴らす。これは彼にコースを案内するのみでなく、あなたがどこにいるかと思って戻って来るような犬の持っている傾向を制限する役目も果すだろう。勿論もしあなたが、犬のレンジをあなたのフィールドで制限しつつある時には、不必要な事かも知れないが、レンジの狭い犬でも深い繁みに入っている時には大変に必要なことであろう。

 ここで一寸彼に教えるべき事がある。それはあなたがホイッスルを用い出すと、彼は間もなく、ホイッスルを吹いているのはあなただということを覚える。これが彼が知らなければならないすべてです。今一つ彼に教えたくなることは、狭く狩らせることです。狭く狩るとは、唯単に特別に小さい林を狩るとか、鶉猟で単鳥を狩る時とか、或はポイントされた鳥が動いた時、再度場所を指示するとかいうことを指す。これはあなたが、何のゲームの猟をやる場合でも大変重宝な事だろう。時にあなたは偶然の鳥が降りるのを見、その場所を捜して欲しいと思うことがあるだろう。もしあなたの犬が狭い場所を捜すように訓練されていたら、こんな時なんの問題もないだろう。この際の合図は「ワーク・クロス」(狭く捜せ)の命令語か或は、ボッブホワイトの鳴声と同じような優しい口笛で出来る。私はボッブホワイトの鳴声の方が良いと思う。この口笛で、犬に狭く捜すよう教えるのは積極的な訓練よりむしろ連想の結果の方が多い。

 あなたは犬がゲームに出会った時は何時でもこの口笛を用いることによって、彼の心の中にしっかりとこの事を覚えさせることが出来る。彼がゲームに出会ったり、ポイントした時に、この優しい口笛を用い給え。又、あなたが鳥を翔たせに行く時も用いる。間もなく彼は、この口笛を聞くと、ゲームを発見しようと思うだろう。彼がこれを覚えたと思ってから、ゲームが居るのを知っている場所に近付き犬を呼び寄せる。そこで笛の短い二吹きで走り始めさせる代りに「オーライ」と言い、ボッブホワイトの鳴声を発する。彼はまさしくあなたの前方の鳥を見付ける為に直ぐ捜し出すだろう。もし彼がその場所から離れて行ってしまうようなら彼を呼び、又上のようにさせる。私の所有している一番広いレンジを持った犬達は、私がこの口笛を用いると2000㎡(2反歩)程の所を5分か10分も捜す。彼等がそれを聞いた時は「オヤジは鳥が近くにいるのを知っているな」と悟り、鳥を捜そうとする。

 もしあなたが、ジープに乗ったり馬に乗ったりして猟をするのに興味を持っているなら、この点について短い命令語のいくつかを作るのが良かろう。馬に乗って犬を働かせたり、或は射撃したりする場合も同様のことがあてはまる。最初の内の訓練の殆んどが徒歩で行われなければならないとしても、時に応じて馬に乗り、若犬の猟野訓練をするのも良い事です。これには彼等に、若い内から馬に馴れさせる事です。この小さい仔犬が最初に大きな四足の馬を如何に感ずるものかを考えて、彼等を細心の注意を以て扱い給え。馬が彼等に向って進んで来ないよう注意し、突然踏みつけたり、蹴ったりしないよう更に倍の注意を払い給え。仔犬が馬は親しい仲間だと一度び悟ったら、あなたの問題は実際には終ったようなものです。彼が更に馴れたら馬を用いてやり給え。どれ程馬を用いるかという事は個人的の好みであり、条件にもよることです。馬を使用することは犬のグランドパターン(特にあなたが広いレンジの犬を望む場合は)の進歩に大変有益です。又馬は少々荒らすぎる仔犬が何か失敗したようなときに捕えるのに便利です。若し馬に乗って走っている場合はあなたが徒歩でいる時に比べて、犬と同じようについてゆく事が出来る。このことは馬から降りることなしに、彼をヒール、カムイン、ウォーせしめることを意味している。

 私は外の訓練の始めや終りに、犬が馬の横から私に飛びかかるのを鼓舞するようにしている。これは彼等と私の結びつきを強める結果となるようです。同様な事がジープにも言える。ジープを彼の訓練や、或はそれに乗って猟を始める時など、機会ある毎に用い、あなたが歩いている時と同じように彼に命令に服するようにさせる。

 完成された演技犬を更に一段と飛躍させる訓練は、空中を飛んでいる偶然の鳥を見てポイントさせる事です。もし彼が捜せなかった鳥をあなたが踏み出して、それが犬の上を飛び、犬がそれを見たら、その瞬間そこで止るべきです。もし彼が止らないようなら、多分鳥のあとを追い、結果においてブレイキングを破ったと同じ事になる。これを彼に許すことは逆行することになり彼の訓練に矛盾する。こんな時は簡単に「ウォー」を命じ、彼にストップさせなければならない。彼の訓練中、このような状況下に、彼が自然に止ったような時は大変良い、しかしもし彼がこれを為さなかったら、「ウォー」を命じ、彼が最初鳥を発見した位置につれ戻し、飛翔のブレイキングを破った時と同様に罰する。

 もしあなたが、以上の事柄を上手に完成したならば、あなたは十分資格のある犬の訓練者であり、あなたの仔犬は真に高級なシューティングドックであると考えて良い。

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